「民青新聞」10月12日付が、24日から公開される映画「沈まぬ太陽」をとりあげていました。
山崎豊子さんの小説『沈まぬ太陽』を読みふけった一人として、映画もぜひ見たいと思います。
紙面を読んで、以前「民青新聞」では主人公の恩地元のモデル、小倉寛太郎さんが登場したことがあったな、とバックナンバーをめくってみると、2002年4月8日付にありました。
新社会人へのメッセージを小倉さんが語っています。
印象的なことばが、そこにはありました。
「行き届いた仕事ができるように労働条件を保障するのが経営者の本来の役割なのですよ。そうしなければ、労働者の自覚が弱まり、積極的に仕事をすることに迷いが多くなります。そんなときは、ちゃんとした仕事ができる環境と条件を労働者が要求することが大切です。でも個別ばらばらにいっていたのでは、ダメです。労働者の共通の問題として、みんなでとりあげていかないといけないんです」
小倉さんが生前に残した本に『自然に生きて』(新日本出版社、2002年1月初版)があります。小倉さんの人柄がにじみでる講演集です。ユーモアも満載で、楽しく読めます。
印象深いのは日本航空労働組合委員長時の次のエピソードです。
「当時わたしが委員長になった時、組合員は整備会社と合わせて四千人いましたが、実はその他に千人近くの長期臨時職員がいたんですよ。一年ごとの契約更新という形で、長い人は十年以上働いています。・・・ストライキ投票をやる時の目標の一つに、長期臨時職員の本採用という要求を掲げたんです」
「会社に言わせると、組合員でもないものを余計なことするなと。いやわれわれは働く仲間だ、同じ職場で同じような仕事をしているんだから、要求に取り入れるのは当たり前じゃないか。・・・会社も呑んだんですよ。しかし会社は、やはり建前があるから試験だけはさせてくれと。試験? 落としたら承知しないぞと(笑い)。」
「全部正社員に採用されました。それまでの長期臨時の期間も勤続年数に加える、ということまで認めさせました」
「いま、世の中がまた狂ってきて、そういうパートさんだとか長期臨時職員が当たり前みたいになって、はなはだしくは、もう派遣職員が当たり前――これは僕は日本国憲法上問題があると思うんですけどね――というようなことになってきているのが非常に残念です」
正規・非正規問わず、働くものへの仲間意識・連帯の心を胸に、アフリカ、中東勤務という報復・差別と向きあった小倉さん。試写会に訪れた20代30代の女性から、その生き様への感動の声があがったというのもうなづけます。
日本航空の体質を批判する中身もふんだんなだけに、小説の発表には困難があったといいます。
「正論が正論として通る世の中にするために、わたしはこの小説をどうしても書きます」
山崎さんの鮮烈なことばを小倉さんは紹介しています。
お二人の思いにふれ、小説も、いま一度読み返そうかと通勤カバンに詰め込みました。
最近のコメント